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ハログ

文系学徒

服ポケット

注 以下の文では固有名詞を避けています

 

 

 

 

 

僕はこの春大学受験に失敗した

 

落ちたことはショックだったが「もうワンランク下の大学受けとけば...」という後悔は微塵もない、受けたこと自体は全く後悔していない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と思っていた

 

 

 

 

 

新生活には変化が伴う

 

大学受験に落ちたということは予備校へ行かねばならない、予備校へ行くということは人と顔を合わさなければならない、そして人と顔を合わさなければならないということは

 

 

 

 

 

 

服がいる

 

 

服はヤバい

 

入塾手続きをしようと予備校へ行こうとして服を着るわけだがヤバい、サイズは大きいわ、シワだらけだわ、ロクなものがない。かわいらしい服を着た幼稚園児にワンパンで殺されそうな服ばかりだった

 

勝負服とは異性を前に一世一代の誘いをかける際着る服だが今の状態は勝負すらできない、土俵にすら上がれていない、ポケモンバトルをするのにそもそもポケモンを持ってない、そんな感じ

 

しかしこういう時頼りになるのは家族である、姉♀lv20に頼んで県の中心まで行き服(アウター)を見繕ってもらった

 

その服がまあ格好いいわけでたいそう満足して外に出る時にはガンガンまるで休むことを許さないブラックバイト顔負けのシフトで着ていたわけだが

 

当然服は一着だけでは足りない、何度も着ていると服だけにボロが出てくる、そこで新たな服を調達することになった

 

GTOの世界なら道行くオシャレな通行人を殴って服をはぎ取ればいいが残念ながらここは現実世界なのでその調達方法は認められていない、正当な方法で入手しなければならない

 

そこで現実世界で認められている正当な方法を知るために

 

ググった

 

 

 

そこで知ったことは、

 

①服に関する様々な用語。(恥ずかしながら僕はアウターが何を表しているかすら知らなかった)

 

②服屋の特徴。(名前は知っているがどういう服を販売しているかなどは全く知らなかった、扱う服の違いってあるんですね)

 

③避けたほうがいいダサメンズファッション。(一目で「ダサい」と判別できるファッションを知った)

 

④避けたほうがいいダサ女性ファッション。(読み物)

 

こうしてようやく僕はスタートラインに立ったわけである

 

遅い、常人なら高校生であるときに体得したであろう知識を高校卒業後にようやく得たというのは果てしなく遅い、しかし人生遅すぎるということはない、恥を知ってこそ、認めてこそ一人前だ

 

知識による武装を終えた僕は次なるステップに入った、そう服屋巡りである

 

 

 

 

単身での

 

 

 

 

 

 

信じられるだろうか

 

今まで僕は積極的に服屋を利用したことがなかった

 

ユニクロに行くことはあっても買うものはいつもヒートテックかエアリズムだった

 

そんな僕が

 

姉♀lv20とGUへ行く時、緊張のあまり腹の調子を壊した僕が

 

一人であのオシャレ空間に乗り込もうというのだ

 

 

 

 

 

機会は突然訪れた

 

その日、なんとなく予備校パンフを眺めると、春期講習その他の手続きのために一度行く必要があると書かれてあった

 

その予備校というのが県内中心部にあるわけで、当然結構な量の服屋がある

 

これはいい、予備校帰りにいっちょブチかましてやるか

 

そう思った僕はさっそく行動に移した

 

以前買った例の服で武装し、リュックに予備校のパンフを詰め込み、戦いの後喫茶店で傷を癒す用にと本まで用意した

 

こうして意気揚々と予備校に向かった

 

 

 

予備校での手続きはあっけないほど簡単だった

 

応対してくれた女性の胸がえらいデカかったが素知らぬ顔をして個人情報を提供した

 

結局僕は胸誘惑に負け、チラチラと胸を見ていたがいつの間にか手続きが終わっていた、罪悪感を感じつつ急いで予備校を後にした

 

そしてついに

 

戦場へ赴く

 

 

 

 

 

ネット情報によると、パンツとアウターは体を覆う面積が多いため、安めの服だとどのブランドかバレてしまうとのこと

 

そのために、中に着るシャツ(恥ずかしながらシャツと言えばTシャツだと思っていた)や下着は安物で構わないが、一番外側に着る服はある程度良質な服を着たほうがいいとのこと

 

パンツはすでに似合うものを持っていたので今回は除外した、勝負はアウターだ

 

そんなことを考えながら予備校から服屋sまでの電車へ乗ろうとすると

 

近くに別の服屋を見つけた

 

急いでネットで確認すると、割と初心者向けの服屋とのこと

 

内心ほっとした

 

正直言って、今から行く服屋sにちょっと、いやかなり恐怖心を抱いていた、そこで「初心者向け」(ネット情報です)の服屋。ウォーミングアップにはちょうどいいと思ったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょうどよくなかった

 

 

 

 

まず店に入るのに二の足を踏んだ、人少なくね?そんで中にいるの女性ばっかじゃね?これ看板にmen/womenって書いてあるけど実はファッション初心者を陥れる罠で女性限定なんじゃね?そして無知丸出しで入ってきた愚かな♂lv18を袋叩きにする場所なんじゃね?

 

しかしビビってても仕方がない、恥をかくのは一瞬だ、ついに僕は足を踏み入れた

 

人生で初めて、自分の足でユニクロ、GU以外の服屋に入った瞬間だった

 

 

 

入ってすぐに男性の姿を見かけたことで、上記の不安は一応解消された

 

しかし新たな不安が首をもたげる

 

一般的に、人が多いと当然多種多様な服装が集まる、そこにはオシャレな服装をしている人もいれば、僕目線からみてもこれはどうかなと思うファッションもある

 

しかし僕の入った服屋は人が少ない、しかもみんなオシャレなのだ

 

奇抜さはないがみんな様になった服を着ている、無難と言えば聞こえは悪いが、誰からも決して馬鹿にされない服装なのだ

 

それを見てるうちにだんだん自分のことが不安になってくる、俺の服は大丈夫なのか、仮に服装がよくても俺は今リュックを背負っているのだ、今の服とリュックってよくよく考えたら合わないんじゃないかなあ、思考はとどまるところを知らない

 

そして店員の「いらっしゃいませ」という追い打ちが飛んでくる

 

認知されている

 

店に入ったことに気づかれている

 

 

 

 

 

見られている

 

 

 

 

 

さらに悪いことに、動揺を押し殺しつつもともかく服を見ようと手に取った服が

 

婦人用の服だった

 

 

 

自爆

 

 

 

こうなるとますます思考の濁流が激しくなる、見られてないかな、「あいつ見る服間違えてやんのw」とか思われてないかな、♂lv18のくせに婦人服を見ている変態として事案にならないかな大丈夫かな、そもそも「あいつ格好ダサw」って思われてないかな

 

渦巻く思考になんとか流されまいと耐えつつ、平然とした素振りで男性用の服を目指した

 

なんとか辿り着き、さも「婦人服がどうかしましたか、僕は男ですよ」オーラを発しながら服を見る

 

ここではたと気づく

 

 

 

何買えばいいんだ

 

そう、僕は服屋に入る前に「何が欲しいか」を一切考えないまま服屋に入ってしまったのだ、アホとしか言いようがないが事実だ、漠然と「自分に似合うアウターをさっと選んじゃおう」程度にしか思っていなかったのだ

 

しかし動揺している頭では自分に何が似合うか似合わないかの判断がつかない、それが思考の濁流に拍車をかける

 

一つの服をずっと見ているというのもほかの人の邪魔になるのではないだろうか、タグを確認して値段を見ることはみっともない行為ではないだろうか、そもそも背中にしょったリュック、人が後ろを通るとき邪魔じゃないだろうか、ああ店員さん「ごゆっくりどうぞ」なんか言わなくていいから

 

完全に頭が真っ白になり、挙句の果てには今回の調達に全く関係のないシャツまで触り出す始末

 

こりゃかなわん、いったん撤退じゃ、そう考え店を出た。店員さんが「またおこしくださいませ」と言ってくる、ああなんかごめんなさい♂のくせに婦人服触って買う気のない服ベタベタ触って何も買わずに出ちゃってごめんなさい許してください

 

 

初めての服屋特攻は散々な目にあい、僕は考察を強いられることになった

 

足りなかったのは明らかに事前準備だ、もっと何が欲しいか明確にしなければ

 

今回欲しいものはアウター、コートは持っているから除外、そうなるとカーディガンか

 

けど今持ってるやつは黒いしベージュあたりを狙おう

 

次に必要なのは「その店がどんな服を扱っているか」の情報だ、ある程度調べていたがもう一度確認してみた

 

すると何件か自分の求めるものがありそうな店があることに気づいた、さらに運のいいことに全部中心部にある

 

よし、今度こそ大丈夫だ、こうして僕は自信満々で服屋sへ向かった

 

 

 

 

 

 

 

大丈夫じゃなかった

 

 

まず電車を降りた時点で少しキツかった、前の服屋でのトラウマが尾を引き、道行く人々が皆こちらを見ているように感じ胃が痛んだ

 

特にタチが悪いのが背後で起こる女の子の笑い声だ、自分の服装を馬鹿にされているようにしか思えなかった

 

嘲笑を振り切り服屋を目指すがここでも誤算に突き当たった

 

 

 

ここにも人がいない

 

今まともな頭で考えれば当たり前なのだがその日は平日、さらに昼だったので客が少ないのは当たり前なのだがそんなことはどうでもいい

 

店員がガン見してくるのだ

 

人がいない分客を逃すまいとしているのか知らんがメチャガン見してくる、「いらっしゃいませ」以降我関せずの関係を望んでいるのにガン見

 

彼はそのガン見が被害妄想を押し広げ♂lv18の腹をキリキリ舞いさせていることに気づくことなくただひたすらガン見、「俺にかまわずほかのオシャレな客を手助けしてくれ」と言おうにも客がいない

 

それでもガン見に耐えつつ何とかよさげな服を見つけた、恐る恐る値段を見る

 

 

 

 

 

高すぎる

 

完全に舐めていた、ネットで「庶民向けに安価な服を提供する店」と書かれていたことを信頼しきっていた、誰だよあんなこと書いたの

 

こりゃかなわんと思って逃げ出そうとするがすかさず視線が追いかけてくる

 

いい加減にしてくれ、俺は人の注目を浴びるのが一番嫌いなんだ、ほっといてくれ、目に映ると妄想が広がるから俺の視界から消えてくれ、ついでに今着てる服を置いてってくれ

 

 

 

などと言えるわけもなく逃げるように店を出て終わった

 

店を出て、あえなく撃沈したことにむせび泣きつつ、僕は考察を行った

 

今回は明らかに店の力量をはかり損ねていた、僕の入った店は初心者が入る店ではない、キャタピーを捕まえて大喜びしているようなガキンチョが入るべき店ではなかったのだ

 

二度の敗戦を経て体はすでに瀕死状態だ、深い疲労感を感じつつも、最後の力とばかりもう一度店を吟味する

 

さっきの店は明らかに五番目のジムぐらいの店だ、今俺に必要なのは序盤に出てくる短パン小僧レベルの店だ

 

そうして一軒の店に狙いをつけた、調べてみると少し歩くが近くにあるというのでそこを目指すことにした

 

道中、路上ライブで外国人の方がひまわりの約束を歌っているのを見た、日本語うまいなと思いつつその店に入った

 

しかし入ったはいいがなかなかカーディガンが見当たらない、仕方がないので別の店へ行こうかと思った時

 

「何かお探しですか」

 

 

ああ

 

ついに

 

最悪の事態が起こってしまった

 

 

短パン小僧と戦うつもりが

 

 

ジムリーダーと当たってしまった

 

この瞬間、カーディガンを探しているという僕の個人的事情は頭の中から完全に追い出されてしまった

 

そしてあっけなくジムリーダーの口車に乗せられることになる

 

「これなんかどうですか」

「すごーいすごく似合ってますよ」

「今なら30%オフですよ」

「ありがとうございましたー」

「ついでに会員登録どうですか」

 

店を出ると外国人がスキマスイッチの奏を歌っていた、まるでもう二度と行くことのないであろう服屋への別れの歌のようだった

 

 

 

 

 

 

 

 

今回調達したものは確かに格好いいし自分に合ったものだがいささか固すぎてとても予備校に着ていける服装ではない、そうまるで居合切りや怪力といったストーリーと関係ない雑用をするためのポケモンのような

 

服だった

 

 

 

ふざけるな

 

俺のあの地獄のような時間はなんだったんだ

 

道行く人々の目線を恐れ

 

自らの格好を恐れ

 

行動を恐れ

 

とにかくありとあらゆるものに頭の中をガチャガチャかき乱されてどんな思いをしたか

 

こんな苦しい思いすんなら服なんぞ要らんわい

 

こうして僕はもう二度と服屋にはいかないと誓い

 

帰りの電車の中で激しい自己嫌悪にかられ

 

妄想内での目線ビームの集中砲火による腹痛に苛まれ

 

家に帰った後もしばらく立ち直れず

 

気が付いたら目の前が真っ暗になり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寝てた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寝たらまた服屋に行きたくなるんだから人間ってホントアホ はー次こそカーディガン買お