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ハログ

文系学徒

最下位は三位かい

その昔、AVの存在も知らなかった僕にとって、小説における性描写は貴重な存在だった。当時僕は官能小説というジャンルを知らず、小説の中でその興奮を知り始めていた。少年は少しずつ性を知り、その魅力に引き込まれた。

 

官能小説は、性描写を目的とする。エロを求めるのだから当たり前である。対して官能小説以外の小説は性描写を手段とする。その描写は全体の話の河の流れの中のちょっとした岩、障害物として挿入される。官能描写は時に推理小説の動機に説得力を与え、歴史小説の主人公の思い出を妖艶に彩る。動機は痴情のもつれから生まれ、男の劣情は女によりいとも簡単に揺り動かされ、その例は枚挙に暇がない。

 

遠い昔、僕の中の衝動が芽生え始め、手探りで知識を得ていたあの頃、一冊の歴史小説に出会った。古代中国を舞台とした話なのだが、その中に忘れられない描写があった。夫が妻を寝台に寝かせてひたすら身体を舐めるというものだった。当時僕は▲部とか☆棒といった隠語はもちろん、ペ(自主規制)という言葉も知らなかった。というよりこいつらベットで何したんだとも思った。そんな僕でもこの行為の異常性は理解できた。人と人ではなく、男と女、極言すれば雄と雌の、文字通り獣のように快楽を求める姿だけがそこにはあった。当時小学生だった僕にはいささか刺激が強い描写だった。

 

しかし、全く奇妙なことなのだが、この夫婦がナニをしているかは性の知識に乏しい僕でも分かった。舐めるという行為は小学生でも理解できる。性行為なぞ子孫を残す目的で行うものなのであって、快楽目的は二の次なのである。それが快楽を追求した結果マニアックなものになっていったのだから、必然的に性描写は細かく記述されることになる。逆に言えば、細かく、マニアックで、人を選ぶような描写であるほど、エロティックであると言える。だがこの描写は、シンプルで、かつ誰もが知る「舐める」という行為で、非常に高いエロパフォーマンスを実現していた。有り体にいえばエロパがよかった。

 

別に僕はこの歴史小説の性描写だけを読んだわけではない。他の小説にも性描写はいくらでも存在する。珍しくもなんともない。だが、ほかの小説に関しては忘れるものも多かったが、かなり昔に読んだにもかかわらず、この描写は余程インパクトが大きかったのか、僕の頭の中から消えることはなかった。

 

最近、ふとその歴史小説を読みたいと思い立った。別に全部読む気などさらさらない。僕はあの強烈なナメナメプレイが読みたいのだ。武将がいくらドンパチやろうと俺の知ったことではない。

 

それで図書館で探してみた。この時僕は、どんな話かも誰が書いたかも題名は何かもありとあらゆる情報を綺麗さっぱり忘れていた。あの話親鸞出てきたっけなー、本のタイトルは水滸伝みたいなタイトルだよなー。てな感じである。この時点でもう時代的に絶対ありえない組み合わせなのだがその時はそんなこと知るすべもない。探すのを中断しグーグル先生に聞いてみても当然ヒットしない。

 

やっぱり手当たり次第に見ていくしかないか。そうして探索を再開し悪戦苦闘していたが、ふと顔を上げると何処かで見たような作者の名前が書かれた本があった。試しに読んでみるが探している本と違う、いやしかしなんとなくこの作者っぽいぞ。何冊か確認した後これかなと思ってある本を手に取った。

 

そう、それが探していた本だった。間違いない。興奮を抑えながらページを飛ばさぬよう慎重に文を流し読みしていく、大丈夫だ焦る必要はない、見落としの無いよう慎重に…。そしてついにその描写を発見した。結構感動した。母をたずねて3000里ならぬエロをたずねて3000秒である。母ではなくエロを求めるあたりに強い意志を持ちつつ母を探したマルコとは違う凡人である僕の性が現れているのだがまあそんなことはどうでもいい。小学校5、6年の時に読んだから、実に6、7年ぶりの再会になる。生き別れのムスコに再会したかのように、その本が愛おしく思えた。

 

しかしまあ、普通に考えて母を会いたいからといって3000里も旅する男がいるだろうか。エロ描写を読みたいからといって50分も無駄にする男がいるだろうか。そうこの探索は割にあっていないのだ確かにそうだ。だがマルコは母に再会したいと思ったから3000里も旅し、僕も性描写に再会したいと思ったから3000秒も無駄にした、この「目的を達成させるためにはそれなりの覚悟、代償を払わなければならない」という点においてはマルコも僕も変わらないはずだ。そう考えると僕のした行為は非常に高尚ではないだろうか、褒められる行為ではないだろうか。

 

それを誰かに話したらドン引きされると思ってここに書いた。何かを求めるために情熱を注ぐ。素晴らしいことだと思いませんか。

ちなみにその本の題名は北方謙三の「楊令伝」第1巻(だったはず)です。興味のある方は一度読んでみてはいかがでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

あ、図書館ではもちろん勃起しました、皆さん周りの目にはお気をつけを