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ハログ

文系学徒

終末40時

StudyPlusというアプリがある。ざっくり言うと、「勉強時間を記録し、それを同じ目標を目指すライバルに公開してバトる」という、いわば勉強SNSとでもいうもの

 

SNSと聞くと「どーせリア充専用」とか「どうせ出会い系」だの考えうる限りのあらゆる言い訳を駆使し、出来るだけSNSを使わないようにしてきた僕も、これは勉強に役立ちそうだということでインスコしている

 

このstplには週間目標みたいなシステムがあって、毎週月曜に今週は30時間勉強します!今週は60時間勉強します!今週は5827827778時間勉強します!などと申告し、それを週間で達成するというもの

 

僕はその足りない頭で40時間と設定した

 

僕の考えでは、平日5日を4時間、土日2日を10時間勉強すればいいと思っていた、いやそれはそれで正しかった。月曜に難なく4時間ノルマ達成、火曜も難なく達成、水曜もnannakuclear、木曜もnannnaclear、金曜も夕食の食べ過ぎで腹が痛くなって死んだ

 

土曜に確認してみると勉強時間は驚異の35分だった

 

は?

 

疑うべきものは自らの計画性を過信し、砂上の楼閣にすぎない壮大な勉強計画を立ててしまった自らの頭である、が僕は一先ず我が目を疑った

 

この時はまだ砂上の楼閣じゃなかった、金曜に4時間できていたなら、僕はそれこそちょちょいのちょいのお茶の子さいさいのさいで目標達成できたであろう

 

しかし35という忌まわしき数字、厳然たる粛然たるあまりに重みのある、いやむしろ軽い数字に僕は完全に打ちのめされた

 

もうダメだ

 

どう考えても達成できない

 

死のう

 

普通の人ならそう考えるところであろう、だが俺は違う、俺は死ぬのならせめて刺し違えて死ぬ、達成できなくとも本望だ

 

僕の頭は兵卒先生のスクエアガンマンのごとく超回転し、アルファ碁顔負けの精密、精緻な読みでどうすれば達成できるかを思考し、ついに条件を満たす至高の計画を思いついた

 

簡単である。今土曜の夜6時だ、今から5時間勉強する、そうすると週間累積時間は27時間となる。後は日曜に13時間勉強すれば良い

 

どう13時間も勉強するか、これも簡単だ。午前5時間、午後8時間でバッチリだ、バッチリ13時間だ

 

そうと決まれば話は早い。僕は驚異的な集中力を発揮し、土曜のうちにノルマである5時間勉強を達成した

 

もう止まらない

 

僕は勝利を確信した。明日は朝6時に起きればいい、こんなもの部活やってた頃は4時半起きもざらだったのだから屁みたいなもんである。やる気は身体中に満ち溢れている、疲れはあるがそんなもの些細な問題だ、いける、やれる、僕ならできる

 

見せてやるよ………俺の本気を……

 

時は来た

 

アラームが鳴る。僕は雷に打たれたように目を覚ました。時計を見た。午前6時だ。勝った。そう思った。溢れ出る笑いを堪え切れない。前日僕は携帯の目覚ましを4重にセットしていた。念には念をということもある。二度寝などあってはならないことだ。保険はかけておくに越したことはない。その必要はなかった。僕は一発で起きたのだ。残りの3つのアラームは役目を果たすことなく解除されるのだ。さよなら。ありがとう。君たちの助けなど要らなかった。僕は1人でなんでもできる男だったから。僕は自分のことをよく分かっていなかった。俺はこんなにも弱気だったのか?違う、俺はこんな臆病者ではない。僕は昨日の臆病者の僕を笑った。全ての留保を捨てた僕は安心した。これで不用意にアラームが鳴って家族を起こす心配はない。知るや否や僕は完全に覚醒した。この瞬間僕は必勝態勢に入った。勝ったというレベルではない。勝って当たり前というレベルまできたのだ。もう二度寝の心配はない。死んでもないだろう。ところで外はまだ寒いな。もう少し布団にくるまるか。アラームが鳴る。僕は雷に打たれて死んだゾンビのようにもぞもぞと時計をみた。10時30分だった。なんだこれは。そう思った。理解が追いつかない。なぜ保険が通らないんだ。そうか解約したんだ。だれが保険を解約したんだ。そうか俺が解約したんだ。じゃあなぜアラームが鳴っているんだ。これは携帯のアラームじゃない、腕時計のアラームだ。そういえば昨日眠気覚ましにセットしたっけ。ごめんよ、ごめんね。君たちの助けが必要だった。僕は4重保険がないと起きられない男だから。僕は自分のことをよく分かっていなかった。俺はこんなにもだらしなかったのか?だらしなかった。昨日の臆病者の僕が指を指して笑った。うるさい。うるさい。全ての捨てられた留保が僕を笑っている。うるさい。やめてくれ。家族はもう起きている。つい4時間前起こさぬようにと心配した家族が、今や僕の心配をしている。なぜ6時に起きなかった。そうか保険を解約したからだ。なぜ俺を起こさなかった。そうかアラームが鳴らないから早くに起きなくてもいいと考えたんだ。知るや否や僕は完全に覚醒した。この時点で僕は詰んだ。敗勢というレベルではない。負けて当たり前というレベルまできたのだ。あの時僕は死んだ。文字通り僕は永眠と言う名の二度寝をした。惜しむべくはそのまま目を覚まさなければよかったものの、なぜか目を覚ましてしまったことだ。ありえない。死んだのになぜ。俺は超人なのか。是非とも外科医に僕の体を検査してほしいものだ。ついでにメスで僕を二度寝させてくれ。これで僕の世界は滅亡する。万事うまくいく。そう万事、万事、バンジー、あ、あ、あ、あ、ああああああああああ

 

 

 

 

命綱はあなたを必ず助けてくれるが、あなたの意思はあなたを助けてはくれないのだ。(桧山,199x~2016)